罪刑法定主義の感覚に欠ける

メンヘラを救う方法に関する一考察や、法律に関する話を中心に、様々な話題を提供します。

AKB48の人気曲の歌詞から考察する「(非モテ)男の理想」

1 はじめに

 AKB48。全盛期は過ぎたのかもしれないが、未だに一定の人気を誇る有名アイドルグループである。彼女らの楽曲の何が男性諸君の心を掴むのか。いつか真剣に考察したいと思っていた。

 私はAKB48の曲をほとんど知らないため、「AKB48 楽曲 人気」などと検索し、出てきた曲の歌詞を取り上げながら、男の心を掴むとはどういうことかを探究していきたい。

2 男性側からの視点で描かれた楽曲

 AKB48の人気楽曲を見ていると、非常に男性側からの視点で描かれた曲が多いことに気付かされる。女性アイドルグループなのだから、女性目線の楽曲を歌うことが多いのだろうと予想していたが、決してそのようなことはなかった。具体例を挙げながら見ていこう。

 (1) Everyday,カチューシャ

   男性側からの一途な片思いが描かれている。「こんな想っているのに」「僕は長い恋愛中」といった言葉をはじめとして、「出会った日から今日までずっと」思いを寄せている男性の姿が描かれている。

  世の中、モテる男ばかりではない(どころかモテる男は少数派であろう。そう信じたい。)のだから、このように「男性側が一方的に思いを寄せる状況」というのは共感を得やすいのだろう。そして、「これだけ一途に思っていればいつかは成就するだろう」という感覚は、アイドルを応援する感覚に近いのかもしれない。まさに、アイドルを応援する男性の共感を得るべくして作成された楽曲といえるだろう。

 (2) ポニーテールとシュシュ

  「今はただの友達」ではあるものの思いを寄せる女子に対して、男子は「好きなんて言えやしないよ」と呟く。(1)に引き続き、思いを寄せるだけで具体的な「告白」には踏み切らない。女子に告白するというシチュエーションを経験したことのない多数のファンに配慮し、やはりここでも、「片思い」という共感を得やすい状況を描き出すにとどまっている。「男性側からの一途な片思い」は一つのキーワードといえそうである。

 もう一つ注目すべきは、女子に対する「変わらないでほしい」という思いである。例えば、(1)では、「永遠(とわ)に変わらないで」と述べられているし、(2)でも、「君は少女のままで」と述べられている。

 大学に入学して変わりゆく女子の姿を見たことのある人は多いであろう。そして、それに失望し、悶々とした思いを抱いた男性諸君も多いのだろう。清純だった(と思われる)あの頃のままでいてほしい、という男性の深層心理をうまく掴んでいるように思われる。

 (3) ヘビーローテーション

  「24時間君だけリクエスト中」という歌詞に象徴されるように、こちらも「男性側からの一途な片思い」が描かれている。

  その上で、「こんな気持ちになれるって僕はついているね」、「たった一度忘れられない恋ができたら満足さ」と述べられていることから、「男性側からの一途な片思いでいいんだよ!」(だからアイドルを応援するのって尊いよね)というメッセージ性を感じてしまうのは、私の性格が悪いからであろうか。

 (4) 小括

  ここまでで見えてきたキーワードは、

 ① 男性側からの一途な片思い

 ② 処女性(清廉性)の肯定

 である。

 

3 「交際する」という視点の欠如

 男性側からの視点で描かれた歌詞を見ていると、徹底して「交際する」という視点が欠如していることが分かる。これは交際経験がないファンに対する配慮なのだろうか?確かに、交際経験のない人に対して、交際することの素晴らしさを説いた楽曲を提供したところで、まったく共感を得られないであろうし、また、そもそも上記(4)②で指摘したとおり、「交際」は「処女性」と背反するものであるから、ご法度とされているのであろう。

 (1) 会いたかった

  「好きならば好きだと言おう」「会いたかった」を連呼する楽曲である。ここでは「好きだと告げること」「会いたいと願うこと」は描かれているものの、「その先」は徹底して排除されている。

 (好きだという気持ちをただ単純に肯定するのは、なんとなく、小学生の恋愛観のようだな、と思ってしまうのは私だけだろうか。)

 (2) 大声ダイヤモンド

  「好きって言葉は最高さ」という言葉で締め括られていることからわかるように、こちらも「好き」という感情を一方的に肯定する楽曲である。小学生の恋愛観のようだ、という感想が一段と強まる。

 (3) 小括

  「男性側からの一途な片思い」を肯定するという視点は一貫しており、その徴憑として、交際するという視点が徹底して排除されていることが挙げられるといえよう。

4 様々なパターンの女子への憧憬

 ここまで述べてきた通り、AKB48の楽曲は男性側の視点で描かれているものが非常に多いものの、一部、女性の視点で描かれているものも存在する。女性の視点で描かれた楽曲は非常に少ないため、分析と呼ぶにはあまりに拙いものであることはご理解いただきたい。

 (1) 恋するフォーチュンクッキー

  まず、こちらは「消極的(思いを秘めることしかできない)」で、「一途」な女子が描かれた楽曲である。歌詞の主体は自らを「地味な花」と表現し、彼女は告白を夢見るものの実際に告白することはできない。まさに「消極的」な女子を表している。

  また、「一途」である。「気づいてくれない」、「私も見て」といった表現からは、女の子が特定の男子に視線を常に投げかけているような場面が想起される。「恥ずかしくて話しかけることもできないけれど、視線だけはいつもアナタだけを見つめている」とでもいうような、典型的な「一途な女子」の姿がそこに映し出されないだろうか。

 ビッチが嫌いな男は多い。ただの一夜の遊びの関係ならビッチで何の問題もないのだろうが、「疑似恋愛」の場であるアイドルにおいて、「ビッチ臭」を醸し出すのはご法度であろう。ステレオタイプであり、現実には異なるのだろうが、一般には、ビッチは積極的で、恋多き女というイメージがある。そこで、これとは反対、すなわち、「消極的(思いを秘めることしかできない)」で、「一途」というイメージを描いているのであろう。

 (2) Teacher Teacher

 他方、こちらの楽曲で描かれた女性はやや積極的である。

 もっとも、「抱きついてもいい?」、「今日だけは……独り占めさせて」といった表現からは、あくまで女性側が「お願いする立場」であり、その意味では消極的な印象も受ける。隠れたところでは実は積極的(男からすれば、それすなわち隠れたところではエロい、という感じなのだろうが)といった、小悪魔的女子は、それはそれで男子は結構好きなのだと思う。

 (3) 小括

  男子の理想に合わせて、いくつかのパターンの女子を描いているのではないか。

 つまり、「奥手な女子」が好きな男子に対しては、(1)のような楽曲を提供し、「処女ビッチ」が好き(女性の皆さんには笑われるだろうが、おそらく、奥手なのだけれどいざとなったらエロいという女子を夢見ている男子は多いように思われる。)な男子に対しては、(2)のような楽曲を提供しているのではないか。

 ともあれ、女性側の視点で描かれている楽曲は非常に少ないため、分析が困難である。

5 まとめ・私見

 2の(4)で述べた視点が非常に重要であるという分析を否定するものは見受けられなかった。つまり、ポイントは、

 ① 男性側からの一途な片思い

 ② 処女性(清廉性)の肯定

 である。

 結局、「一途な片思いを続けていればそれが成就する」ということを信じたいし、また、「ビッチよりは清純な子が好き」という男子は多い。その多数派の心を掴める秋元康はやはり天才なのだろう。